外交と国益

「外交と国益」(大江博)

 外務省高官が「日本を取り巻く国際情勢」を分かりやすく書いています。
 今の日本の状態を最もよく説明しているし、文章も分かりやすいと思います。
 長くないので興味ある方は是非。
 いくつか内容を紹介します。

1.アメリカか中国か?、という問いは無意味
 よくメディアで、アメリカか中国か、という議論がなされる。
 しかし、対米関係と対中関係は「トレードオフ」では無い。むしろアメリカは、日本に中国と関係を深め、中国に対して大きな影響力を持って欲しいと望んでいる。中国にとっても、日本がアメリカに影響力を持って欲しいと思っている(※)。両国とも日本がお互いの国に対して影響力を保持することを望んでいる。
 特にアメリカとの関係は重要で、関係を維持するために「協力」と「フレンドリーアドバイス」(アメリカの政策が間違っていると思った時、改善するよう説得すること)が大切である。
※ もっとも、中国関係団体が米国議会に対して、対日関係を悪化させようとロビーイングしている疑惑がある
 
2.北朝鮮と拉致問題
 北朝鮮は日本の経済援助を望んでいる。
 また、六者協議の他の参加国も、エネルギー支援に日本が参加することを望んでいる。
 北朝鮮はアメリカと良い関係にあるとき、日本に対して譲歩しない。「日本だけが、拉致に拘って競技の進展を遅らせている」ように言うが、これは日本の世論と国際世論を動揺させるために行っている。
 北朝鮮や他の国は、日本の経済援助が必要であるから、拉致問題が解決されるまで粘り強く交渉することだ。

3.中国は脅威か
 中国の経済発展が今後も続けば、中国市場が拡大し日系企業は更なる利益を得られるかもしれない。一方、中国の技術開発が進み、(外資を規制し)低コストの労働力を独占し、良質の商品を生み出せるようになれば、日系企業がシェアを失う可能性もある。
 中国の軍事的拡大は、現在の日本の脅威にはなっていない。日本を侵攻する可能性はほぼ無い。しかし、中国から核やミサイルなどの兵器が外部に渡れば、国際情勢を不安定にする原因になる。
 環境問題においても、日本が技術支援をする一方で、中国内部も規制に取り組まなければいけない。軍事も環境も、中国が責任ある国家にならなければいけない。

4.どのような場合、武力行使が許されるのか
 国連憲章において武力行使が許されているのは「個別的、集団的自衛権の行使」と「集団安全保障体制の下での行使」の2つである。
 個別的・集団的自衛権は、自国もしくは自国と密接な関係のある国に対して、相手が攻めてきたと時に反撃する権利で、普通の権利として受け入れられ、国連にも事後に報告するだけで良いとされています。
 集団安全保障体制の下での行使は、国連憲章39条に定める「侵略行為」と認定された後、41条に基づく経済制裁が行われ、それでも解決しない時に「国連軍」が組織され軍事行使が行われる。もっとも、現実には、各国は自国の指導権を委ねたくないため、国連軍が組織されたことは今まで一度もない。
 そのため、国連安全保障理事会が各国による武力行使にお墨付きを与えることにより、多国籍軍が組織され「正規の国連軍」として安全保障を担ってきた。そのお墨付きとは、「脅威または侵略行為」という認定と、武力行使を容認する認定である。2003年のイラク戦争は、直近のお墨付きを中露の反対があったため得られず、1991年の国連決議のお墨付きを頼りにしたため問題になった。

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